345
鐵や、木や、又は草にて作れるものは、賢者は之を牢き縛と稱せず、珠環と、妻子との欲は貪著する所强し。
346
賢者は、之をぞ强くして〔人を惡趣に〕墮し、牢くして解き難き縛と云ふ、人は之を破りて、無欲〔の身となり〕、愛樂を棄てて出家す。
347
欲を樂しむものは〔欲の〕流に隨つて下ること、蜘蛛の自ら造りたる網を〔下る〕が如し、賢者は之を破りて、欲なく、所有ゆる苦惱を棄てて去る。
348
先なる〔=過去〕を棄て、後なる〔=未來〕を棄て、中なる〔=現在〕を棄てよ、〔斯くするものは〕生有の彼岸に到れるなり、一切處に著心なければ、更に生老に絆さるることあらじ。
349
疑念のために心惱み、欲熾にして、不淨を淨と見る人は、其の愛念益益增長す、斯る人は〔其の〕縛を堅くするなり。
350
疑念の滅を喜び、常に念覺ありて、不淨觀を修す、彼は〔其の〕愛念を滅さん、彼は魔の縛を斷たん。
351
(5)圓成の域に達し、怖畏なく、愛を離れ、著なく、生有の棘を斷てり、是れ其の最後身なり。
352
愛を離れ、著を去り、(6)詞句に巧に、(7)綴りたる文字と、其の前後とを解す。彼は(8)最後身にして、大智者大丈夫と稱せらる。
353
(9)〔我〕所有ゆるものに克ち、所有ゆるものを知り、所有ゆる法に於て汙さるる所なし、所有ゆるものを棄て、(10)愛盡の上に於て解脫を得たり。自ら證り知りて、又誰をか〔師と〕仰がんや。
354
法施は、所有ゆる施に勝ち、法味は、所有ゆる味に勝ち、法樂は、所有ゆる樂に勝ち、愛盡は、所有ゆる苦に勝つ。