得ず。
281
語を愼しみ、意を能く制し、身に不善を作さず、此等の三を業道より淨除せば、諸大仙の說き給へる道を得ん。
282
應念より智慧生じ、不應念なれば智慧滅ぶ、此の有と非有と、二種の道を知りて、智慧の增すが如く、然く己を處せよ。
283
(6)〔煩惱の〕林を伐れ、單り樹を〔伐る〕勿れ、林よりは危難來る、林と下生とを伐らば、比丘等、煩惱の林なき人とならん。
284
男子の女子に對する煩惱、些にても斷たれざる所あらば、彼の心は尙ほ囚はる、乳を貪る犢の母牛に於けるが如くに。
285
自己の愛念を斷つこと、牛を以て秋時の蓮を〔折る〕が如くし、善逝の說き給ひし(7)寂靜の道、涅槃を增長せよ。
286
「此處に雨時を過さん、寒暑の閒、此處に〔住せん〕」と、愚人は斯く思惟して死の近くことを覺らず。
287
兒や畜の愛に溺れ、樂に耽るものを、死王の拉し去ること、眠れる村里を大水の漂はし去るが如し。
288
兒も、父も、親族も恃怙にあらず、死王に囚へられたるものには親族も恃怙たらず。
289
戒によりて自ら制せる賢者は、此の意を知りて、涅槃に赴く道を疾く疾く淸くせよ。
(1) 八正道を云ふ。 (2) 四聖諦の謂なり。 (3) 佛を云ふ。 (4) 欲等の箭を除くの法。 (5) 淨とは涅槃の謂なり。以下三偈皆同一の意に見よ。 (6) 天然の林間に猛獸毒蛇等の危險あるが如く、貪瞋癡煩惱の林にも種種の危難あり、由りて煩惱を林に譬へたるなり、或は Vana (林) Vanatha (下生)には共に又煩惱、欲等の意あり、三四四偈參照。 (7) 或は、寂靜の道を增長せよ、涅槃は善逝の說き給ひし所なり。
廣衍品第二十一