258
〔人の〕多くを語る、〔彼〕之によりて賢者たるにあらず、堪忍あり、怒なく、恐なき〔もの、彼ぞ〕賢者と稱へらる。
259
〔人の〕多くを語るも未だ持法者たるにあらず、法を聞くこと尠しと雖も、身にて之を(1)見、法を等閑にすることなくば、彼こそ法の護持者なれ。
260
〔人の〕頭の白き、〔彼は〕之によりて長老たるにあらず、斯の如きは、壽熟して、空しく老いたる人と稱へらる。
261
人に諦と・法と・愛と・自約と、自調とあり、此の垢穢を除きたる此の賢者こそは長老と稱へらるれ。
262
唯言語ありとも、又美しき形色ありとも、嫉、慳、誑心あらば、人は善貌のものにあらず。
263
此の惡を斷ち、根絕し盡して、此の瞋恚を除きたる智者こそは善貌の人と稱へらるれ。
264
自制なくして、妄語を語らば、髮を剃るとも沙門にあらず。〔人若し〕欲貪あらば、奈何でか沙門たり得べき。
265
人若し總て大小の惡を制せば、〔彼は〕諸惡を制せるによりて、沙門と名けらる。
266
(2)他に〔食を〕乞ふが故に比丘たるにあらず、一切の法を學ぶも尙ほ未だ比丘にあらず。
267
罪業福業共に捨てて、淸淨行の人たり、智慧を以て世界を渡るもの、彼ぞ比丘と稱せらる。
268 269
寂默なりとも、愚にして智なくば牟尼にあらず、(3)權衡を取るが如く、(4)勝法を取り、邪業を捨つる牟尼は、彼之によりて牟尼なり、人若し世の(5)兩事共に知らば、彼之によりて牟尼と稱へらる。
270
生命を害ふが故に(6)聖なるにあらず、一切生類を害はざるが故に聖者と名けらる。