譬ふべく、泥土なき池の水の如し、斯る人には輪廻あるなし。
96
其の意は寂靜なり、其の語其の業、亦寂靜なり、善く證りて解脫を得、安息を得たる此の人の。
97
妄信なく、無爲〔の法〕を覺り、且つ縛を破れる人、業緣を絕ち、欲を棄てたる、これぞ誠に上上の人なる。
98
聚落にても、森林にても、海にても、陸にても、聖者の止まる處、其處ぞ樂しき〔處なる〕。
99
森居は樂むべし、之は衆人の樂まざる處、離貪の人は之を樂む、彼等は諸欲を求めざるなり。
千千品第八
100
意義なき文句の語は、〔其の數〕一千なりとも、人の聞いて寂を得べき有義の一語は之より勝る。
101
意義なき文句の偈は、〔其の數〕一千なりとも、人の聞いて寂を得べき一偈句は之より勝る。
102
意義なき文句の偈一百〔章〕を誦せんよりは、人の聞いて寂を得べき一法句〔を誦する〕ぞ勝れる。
103
戰場に於て千千の敵に克つものよりは、獨り己に克つもの、彼こそ最上の戰勝者なれ。
104 105
己に克てるは、總て他の人人に克てるに勝る、天も乾闥婆も、魔王も、並に梵天も、此の常に己を御し自ら制する人の勝利を轉じて、敗亡となすこと能はず。
106
人若し月に月に、千金を〔棄てて〕、犧を供すること百年、而して又一人の己を修めたるものを供養すること頃刻ならば、此の供養こそ、彼の百年の焚祀に勝りたれ。
107
人若し林閒にありて、火神に奉事すること百年、而して