ものは岸邊にありて奔馳す。
86
善く說かれたる法に隨順する輩は、越え難き魔の領土を〔越えて〕彼の岸に到らん。
87 88
賢者は黑法を棄てて、白〔法〕を修すべし、家より〔離れて〕、家なき身となり、樂を得難き遠離の所に於て、此處に賢者は諸欲を棄てて、我有なき身なり、妙樂を求め、諸の心穢より、己を淨くすべし。
89
(4)正覺分に於て、善く心を修習し、執することなくして、著を棄つるを樂む、此の光輝ある(5)漏盡者は、世に靜穩を得たるなり。
(1) 諸欲を求め、諸欲の爲に閑語を交ふることなし。 (2) 浮みたる顏、沈みたる顏をなすことなし。 (3) 彼岸とは涅槃を云ひ、此岸とは生死を云ふ。次偈の彼岸の意も同じ。 (4) 所謂七菩提分法なり。 (5) 漏盡者とは煩惱を盡したる人の意にて阿羅漢を云ふ。
阿羅漢品第七
90
道を踏み終へ、一切處に離憂・得脫せるもの、總ゆる纒結を斷じたるものには執惱あることなし。
91
〔正〕念ある人は精勤し、彼等は王家を貪樂することなし、〔鵞王〕の池沼を棄つるが如く、彼等亦各各其の家を棄つ。
92
〔財物〕を蓄積することなく、知覺して食を受け、其の行處は空にして、相なく、而して解脫あり、空行く鳥の〔道の〕如く、斯る人の道を測ることは難し。
93
其の煩惱や悉く盡き、食に於て著あることなし、其の行處は空にして、相なく、而して解脫あり、空行く鳥の〔跡の〕如く、斯る人の跡を測ることは難し。
94
諸根の寂靜に歸せること、御士に善く馴らされたる馬の如く、慢を棄て、煩惱を盡したる、斯る人は諸天も羨む所なり。
95
怒らざること大地に等しく、よく禁戒を守りて門閾に