28
智者の精勤を以て放逸を拂ふ時、彼は心に憂なく、智慧の樓閣に上りて、憂ある衆生界を〔見ること〕、猶ほ山頂に立てる賢者の、地上の愚者を觀るが如し。
29
放逸の徒の中にありて精勤し、眠れる人の中にありて能く醒めたる、斯の如き智者は快馬の駑馬を遺つるが如くにして進む。
30
精勤によりて帝釋は諸天の主となれり、精勤は人に稱へられ、放逸は常に賤めらる。
31
精勤を樂み、放逸の怖るべきを覺れる比丘は、燃ゆる火の如くに、大小の(2)纏結を〔盡し〕去る。
32
精勤を樂み、怠惰の怖るべきを覺れる比丘は、退墮すること能はずして、涅槃に近づく。
(1) 涅槃の境をいふ。 (2) 煩惱を云ふ、是れ煩惱は衆生の心を纏ひ結びて生死海に流轉せしむるが故なり。
心品第三
33
躁ぎ、動き、護り難く、制へ難き心、智者は之を矯むること、箭匠の箭を〔矯むるが〕如くす。
34
陸に棄てられ、水中の家を離れたる魚の如く、此の心は躁ぐ、(1)魔王の領土を逃れ出んが爲に。
35
抑ふること難く、輕躁にして、隨處に欲を遂げんとする〔斯の如き〕心を御するは可なり、御したる心は樂を齎す。
36
見ること難く、微妙にして、隨處に欲を遂げんとする智者よ、〔斯の如きの〕心を護れ、護ある心は樂を齎す。
37
遠く行き、獨り動き、形なくして、胸に潛める、〔斯る〕心を制するものは魔の縛より脫れん。
38
心堅固ならず、妙法を了解せず、信念定まらざる人の智慧は成滿することなし。
39
心に貪染なく、心に迷惑なく、善惡〔の思〕を棄て、覺