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「泣くばかりありてこそあれ夏引のいとまやはなき一目二目に」。
又宮より、
「君と我猶しらいとのいかにしてうきふしなくて絕えむとぞ思ふ。
ふためみめはげに少くしてけり。いみあれば〈心安し以下十六行流布本無〉とゞめつ」とのたまへる御かへり、
「世をふとも契りおきてし中よりはいとゞゆゝしき事も見ゆらむ」
と聞えらる。その頃五月二十日よるばかりより四十九日の忌たがへむとて、ありた〈しカ〉ありきの所にわたりたるに、宮たゞ垣をつ〈へカ〉だ〈つ脫歟〉る所にわたり給ひてあるにみな月ばかりかけて雨いたう降りたるに、たれも降りこめられたるなるべし。こなたにはあやしき所なればもりぬるさわぎをするに、かくのたまへるぞいとゞものくるほしき、
「つれづれのながめのうちにそゝぐらむことのすぢこそをかしかりけれ」。
かへり、
「いづこにもながめのそゝぐころなれば世にふる人はのどけからじを」。
又、のたまへり、「のどけからじとか、
天の下騷ぐこゝろもおほみづにたれもこひ路にぬれざらめやは」。
御かへり、
「世とともにかつみる人の戀路をもほす世あらじと思ひこそやれ」。
又、宮に、