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步み出でぬればおなじやうになりぬ。

     いひにくきもの

人の消そこ仰事などの多かるを、序のまゝに始より奧までいといひにくし。返り事又申しにくし。耻かしき人の物おこせたるかへりごと。おとなになりたる子の思はずなること聞きつけたる、前にてはいと言ひにくし。

四位五位は冬、六位は夏。とのゐすがたなども品こそ男も女もあらまほしきことなめれ。家の君にてあるにも誰かはよしあしを定むる。それだに物見知りたる使ひ人ゆきて、おのづから言ふべかめり。ましてまじらひする人はいとこよなし。猫の土におりたるやうにて〈十二字衍歟〉。たくみの物くふこそいと怪しけれ。新殿を建てゝ東の對だちたる屋を作るとて、たくみども居なみて物くふを、東面に出で居て見ればまづ持てくるや遲きと汁物取りて皆飮みて、かはらけはついすゑつゝ次にあはせを皆くひつれば、おのは不用なめりと見るほどに、やがてこそうせにしか。二三人居たりし者皆させしかばたくみのさるなめりと思ふなり。あなもたいなの事どもや。

物がたりをもせよ。昔物語もせよ。さかしらにいらへうちして、こと人どものいひまぎらはす人〈人恐衍〉いとにくし。

ある所に中〈何イ〉の君とかやいひける人の許に、君達にはあらねどもその心いたくすきたる者にいはれ、心ばせなどある人のながつきばかりにいきて、「有明の月のいみじう照りておもし