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かく乘りたらむもかしこかるべき事かは。定めたらむさまのやんごとなからむこそよからめ」とものしげにおぼしめしたり。「おり侍るほどの待ち遠に苦しきによりてにや」とぞ申しなほす。
御經のことに明日渡らせおはしまさむとて今宵參りたり。南の院〈道隆邸〉の北おもてにさしのぞきたればたかつきどもに火を燈して二人三人四人さるべきどち、屛風引き隔てつるもあり。几帳中にへだてたるもあり。又さらでも集り居てきぬどもとぢ重ね、裳の腰さしけさうずるさまは更にもいはず、髮などいふものは明日より後はありがたげにぞ見ゆる。「寅の時になむ渡らせ給へるなり。〈如元〉などか今まで參り給はざりつる。扇もたせて尋ね聞ゆる人ありつ」など吿ぐ。まて、まことに寅の時かとさうぞきたちてあるに、明け過ぎ日もさし出でぬ。「西の對の唐廂になむさし寄せて乘るべき」とてあるかぎり渡殿へ行く程に、まだうひうひしきほどなる今參りどもはいとつゝましげなるに、西の對に殿すませ給へば、宮にもそこに坐しまして、まづ女房車にのせさせ給ふを御覽ずとて、みすのうちに宮、淑景舍、三四の君〈后宮御妹〉、殿のうへ、その御弟三所立ちなみておはします。車の左右に、大納言、三位中將二所してすだれうちあげ、下簾ひきあげてのせ給ふ。皆うち群れてだにあらば隱れ所やあらむ。四人づゝ書き立てに隨ひてそれそれと呼び立てゝのせられ奉り步み行く心ち、いみじうまことにあさましうけ證なりともよのつねなり。みすのうちにそこらの御目どものなかに、宮の御前の見苦しと御覽ぜむは更にわびしき事かぎりなし。身より汗のあゆれば、繕ひ立てたる髮などもあ