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Page:Kokubun taikan 09 part1.djvu/322

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のつやゝかなるが革に土多くついたるをはきて、白き紙に包みたる物、もしは箱の蓋に草紙どもなど入れてもて行くこそいみじう呼び寄せて見まほしけれ。門ぢかなる所をわたるを呼び入るゝに、あいぎやうなくいらへもせでいくものはつかふらむ人こそ推しはからるれ。行幸はめでたきもの。上達部、君達、車などのなきぞ少しさうざうしき。萬の事よりもわびしげなる車にさうぞくわろくて物見る人いともどかし。說經などはいとよし、罪うしなふかたの事なれば。それだに猶あながちなるさまにて見苦しかるべきを、まして祭などは見でありぬべし。下簾もなくて白きひとへうち垂れなどしてあめりかし。唯その日の料にとて車も下簾もしたてゝ、いと口をしうはあらじと出でたるだにまさる車など見つけては、何しになどおぼゆるものを、ましていかばかりなる心ちにてさて見るらむ。おりのぼりありく君達の車のおし分けて近う立つ時などこそ心ときめきはすれ。よき所に立てむといそがせばとく出でゝ待つほどいと久しきに、ゐはり立ちあがりなどあつく苦しくまちこうずる程に、齋院のゑんがに參りたる殿上人、所の衆、辨、少納言など七つ八つ引きつゞけて、院のかたより走らせてくるこそ事なりにけりと驚かれて嬉しけれ。殿上人の物言ひおこせ、所々の御前どもにすゐばんくはすとて、さじきのもとに馬ひき寄するに、覺えある人の子どもなどは雜色などおりて馬の口などしてをかし。さらぬ物の見もいれられぬなどぞいとほしげなる。御輿の渡らせ給へば、すだれもある限り取りおろし過させ給ひぬるにまどひあぐるもをかし。その前に立てる車はいみじう制するに、「などて立つまじきぞ」と强ひて立つれば、いひわづらひ