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Page:Kokubun taikan 09 part1.djvu/287

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しり出でゝ西にむかひて立ちぬ。つぎつぎ出づるに足ぶみを拍子に合せては、はんびの緖つくろひ、かうぶり、きぬのくびなどつくろひて、あやもなきこま山など歌ひて舞ひ立ちたるは、すべていみじくめでたし。おほひれなど舞ふは日一日見るとも飽くまじきを、はてぬるこそいと口をしけれど、又あるべしと思ふはたのもしきに、みことかきかへしてこのたびやがて竹のうしろから舞ひ出でゝぬぎ垂れつるさまどものなまめかしさは、いみじくこそあれ。かいねりの下襲など亂れあひて、こなたかなたにわたりなどしたる、いで更にいへばよのつねなり。このたびは又もあるまじければにや、いみじくこそはてなむ事は口をしけれ。上達部などもつゞきて出で給ひぬれば、いとさうざうしう口をしきに、賀茂の臨時の祭はかへりだちの御神樂などにこそなぐさめらるれ。庭火のけぶりの細うのぼりたるに、神樂の笛のおもしろうわなゝき、ほそう吹きすましたるに、歌の聲もいとあはれにいみじくおもしろく、寒くさえ氷りてうちたるきぬもいとつめたう、扇もたる手のひゆるもおぼえず。

ざえのをのこども召して飛びきたるも、人長の心よげさなどこそいみじけれ。里なる時は唯渡るを見るに飽かねば御社まで行きて見る折もあり。大きなる木のもとに車たてたれば、松のけぶりたなびきて、火の影にはんびの緖きぬのつやも晝よりはこよなくまさりて見ゆる。橋の板を踏みならしつゝ聲合せて舞ふ程もいとをかしきに、水の流るゝ音、笛の聲などの合ひたるはまことは神も嬉しとおぼしめすらむかし。

少將といひける人の年ごとにまひ人にて、めでたきものに思ひしみけるに、なくなりて上の