Page:Kokubun taikan 09 part1.djvu/262

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添ひつきてのぞくを「あしかめり。うしろめたきわざ」ときこえごつ人々もいとをかし。御しやうじの廣うあきたればいとよく見ゆ。うへは白き御ぞども紅のはりたる二つばかり、女房の裳なめり。引きかけておくによりて東おもてにおはすればたゞ御ぞなどぞ見ゆる。しげいしやは北にすこしよりて南向におはす。紅梅どもあまた濃く薄くて濃きあやの御ぞ、少しあかき蘇枋の織物の袿、萠黃のかたもんのわかやかなる御ぞ奉りて扇をつとさし隱し給へり。いといみじくげにめでたく美くしと見え給ふ。殿はうす色の直衣、萠黃の織物の御指貫、紅の御ぞども、御ひもさして廂の柱にうしろをあてゝこなたざまに向きておはします。めでたき御有樣どもをうちゑみて例のたはぶれごとをせさせ給ふ。しげいしやの繪に書きたるやうに美くしげにて居させ給へるに、宮いとやすらかに今すこしおとなびさせ給へる御けしきの紅の御ぞに匂ひ合せ給ひて、なほたぐひはいかでかと見えさせ給ふ。御てうづまゐる。かの御かたは宣耀殿、ぢやうぐわでんをとほりて童二人下仕四人してもてまゐるめり。から廂のこなたの廊にぞ女房六人ばかりさぶらふ。せばしとてかたへは御おくりして皆歸りにけり。櫻のかざみ、萠黃紅梅などいみじく、かざみ長くしり引きて取り次ぎまゐらすいとなまめかし。織物のからぎぬどもこぼれ出でゝ、すけまさのうまのかみのむすめ少將の君、北野の三位のむすめ宰相の君などぞ近くはある。あなをかしと見る程に、この御かたの御てうづばんの采女、あをすそごの裳、唐ぎぬ、くんたい、ひれなどしておもてなどいと白くて下仕など取り次ぎてまゐる程、これはたおほやけしう唐めいてをかし。おものゝをりになりてみ