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ら、少しすのもと近く寄り居給へるぞ、まことに繪に書き物語のめでたきことにいひたる、これにこそはと見えたる。御前の梅は西はしろく東は紅梅にて少しおちかたになりたれど猶をかしきに、うらうらと日の氣色のどかにて人に見せまほし。すのうちにまして若やかなる女房などの髮うるはしく長くこぼれかゝりなどそひ居ためる、今すこし見所ありをかしかりぬべきに、いとさだ過ぎふるぶるしき人の、髮なども我にはあらねばや、ところどころわなゝきちりぼひて大かた色ことなるころなれば、あるかなきかなるうすにびどもあはひも見えぬきぬどもなどあれば、露のはえも見えぬに、おはしまさねば裳も着ずうちきすがたにて居たるこそ物ぞこなひに口をしけれ。「しきへなむまゐる。ことづけやある。いつかまゐる」などのたまふ。「さてもよべあかしもはてゞ。されどもかねてさいひてしかば待つらむ」とて月のいみじう明きに、西の京よりくるまゝに、局をたゝきし程からうじてねおびれて起き出でたりしけしき、いらへのはしたなさなど語りてわらひ給ふ。むげにこそ思ひうんじにしか、などさるものをばおきたるなど、げにさぞありけむといとほしくもをかしくもあり、しばしありて出で給ひぬ。とより見む人はをかしう內にいかなる人のあらむと思ひぬべし。奧のかたより見いだされたらむうしろこそとにさる人やともえ思ふまじけれ。暮れぬればまゐりぬ。御まへに人々多く集ひ居て物語のよきあしき、にくき所などをぞさだめいひしろひずうじ、なかたゞが事など御前にもおとりまさりたる事など仰せられける。「まづこれはいかにとことわれ。なかたゞがわらはおひのあやしさを、せちに仰せらるゝぞ」などいへば、