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ば、それにかはりて、
「かけて見し末も絕えにし日陰草なにゝよそへて今日結ぶらむ」。
女院〈上東門院〉いまだ位におはしましゝをり八講行はせ給ひける捧げ物にはちすの珠數參らせ給ふとて、
「となふなる波の數にはあらねどもはちすのうへの露にかゝら〈なりなイ〉む」。
同じ頃、傳の殿、橘を參らせ給へりければ、
「かばかりもとひやはしつるほとゝぎすはな橘のこゝ〈二字香カ〉にこそありけ〈二字イ無〉れ」。
かへし、
「橘のも〈なイ〉りものならぬ身をしればしづえなくてはとはぬとぞ聞く」。
小一條の大將〈濟時〉、ひつにおはしけるに、傅の殿〈道綱〉を「必ずおはせ」とて、待ち聞え給ひけるに、雨いたう降りければ、えおはせぬ程に、隨身雨いたうふりければえおはせぬほどにすゐじん〈雨以下廿一字衍歟〉「したくらをおほみ」と聞え給へりける、かへり事に、
「ぬれつゝも戀しきみちはより〈ぎイ〉なくにまだきこへ〈一字衍歟〉ずゑと思はざらむ」。
中將の、尼に家を借り給ふに、借し奉らざりければ、
「蓮葉の浮葉をせばみこの世にもやどらぬつゆと身をぞ知りぬる」。
かへし、
「はちすにもたまゐよとこそむすびしか露は心を置きたがへけり」。