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にかはく〈河泊〉といふ神あり。
「我が國の神のまもりや添へりけむかはくげかりしあまつ空かな」。
かへし、
「今ぞ知るかはくと聞けば君がため天照る神の名にこそはあれ」。
鶯、柳の枝にありといふ題を、
「我が宿のやなぎの糸は細くとも來るうぐひすは絕えずもあらなむ」。
傅の殿〈道綱〉、始めて女のがりやり給ふにかはりて、
「今日ぞとやつらく待ち見むわが戀は〈のイ〉始もなきかこなたなるらむ〈べしイ〉」。
度々のかへり事な〈かイ有〉りけれは、時鳥のかたをつくりて、
「飛びちがふ鳥のつばさをいかなればすだつ歎きに返さゞるらむ」。
猶返り事せざければ、
「さゝがにのいかになるらむ今日だにも知らばや風の亂る氣色を」。
又、
「絕えてなほすみのえになき中ならばきしに生ふなるくさもがなきみ」。
かへし、
「すみよしの岸に生ふとは知りにけりつまむ摘まじはきみがまにまに」。
さねかたの兵衞の佐にあはすべしと聞きたまひて、少將〈道綱〉にぞ〈とイ〉おはしけるほどのことなる