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內侍のかんの殿、「天の羽衣といふ題をよみて」と聞えさせ給へりければ、
「ぬれぎぬに天の羽衣むすびけりかつはもしほの火をし消たねば」。
みちの國にをかしかりける所々を繪に書きて、もてのぼりて見せ給ひければ、
「みちのくのちがの島にて見ましかばいかに躑躅のをかしからまし」。
ある人加茂の祭の日婿とりせむとするに、男のもとよりあふひ嬉しきよしいひおこせたりけるかへりごとに、人にかはりて、
「たのみ〈まイ〉ずな御垣をせばみあふひはゝ〈くさイ〉しめのほかに〈もイ有〉ありといふなり〈如元〉」。
親の御忌にて、一つ所にはらか〈らイ有〉たちあつりておはするを、こと人々は忌みはてゝ家に歸りぬる〈にイ有〉一人とまりて、
「深草のや〈さイ〉とになりぬるやどもなどとまれるつゆのたのもしげなき」。
かへし、ためまさの朝臣、
「深草の誰もこゝろにしげりつゝあさちがはらのつゆにけぬべし」。
當代の御いかに、ゐのこのかたを作りたりけるに、
「よろづ世をよばふ山べの猪の子こそきみがつ〈さイ〉かふ〈ゆイ〉るよはひなるべし」。
殿より八重山吹を奉らせ紿へりけるに、
「誰かこの數は定めしわれはたゞとへとぞおもふやまぶきのはな」。
はらからの、みちのくにの守にて下るを長雨しける頃、その下る日、晴れたりければ、かの國