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「時鳥かくれなき音を聞かせてはかけはなれぬる身とやなるらむ」。
五日、
「物おもふに年經けりとて〈もイ〉あやめ草今日に〈をイ〉たびたびすぐしてぞしる」。
かへり事、
「つもりける年のあやめもおもほえず今日も過ぎぬる心見ゆれば」
とぞある。いかに恨みたるにかあらむとぞあしかりける。さてれいのもの思ひは、この月も時々同じやうなり。二十日の程に「遠うものする人にとく〈らカ〉せむ。この餌袋の內に袋結びて」とあれば、結ぶほどに出で來にたりや。「歌を一重袋に入れ給へ。こゝにいとなやましうて、え讀むまじ」とあれば、いとをかしうて「のたまへる物ある限り讀み入れて奉るをもしもりやうせむ。に〈こイ〉とふくる〈ろイ〉をぞ給はまし」とものしつ。二日ばかりありて、心ちのいと苦しうても、事久しければなむ、ひとへ袋といひたりしものを、わびてかくなむものしたりし。返しかうかうなどあまた書きつけて、「いとようさだめて給へ」とて、雨もよにあれば、少し情ある心ちして待ち見る。劣り優れり〈りてイ〉見ゆれど、さかしうことわらむもあいなくてかうものしけり、
「うちとのみ風の心をよすめれば返しは吹くも劣るらむかし」
とばかりぞものしける。六七月、同じ程にありつゝはてぬ。つごもり二十八日に「すまひの事により內に侍ひつれど〈ばイ〉う〈こイ〉ちものせむとてなむ急ぎ出でぬるな〈むイ有〉」とて見えたりし人、その