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しかば、賞ども行はせ給ひき。其のほどの事、申し盡すべくも侍らぬ上に、みな人知らせ給ひたらむ。世を治めさせ給ふ事むかしに耻ぢず。記錄所とて後三條の院の例にて、かみは左大將公敎、辨三人、寄人などいふもの、あまた置かれはべりて、世の中をしたゝめさせ給ふ。次の年も、諒闇にて三月にぞつかさめしなどせさせ給ふ。十月に大內造り出だしてわたらせたまふ。殿舍ども門々などの額は、關白殿かゝせ給ふ。宮造りたる國の司など七十二人とか、位賜はりなどす。中頃かばかりのまつりごとなきを、千世にひと度すめる水なるべしとぞおもひあへる。上は、淸凉殿、藤つぼ、かけておはします。女房、弘徽殿、登華殿などにつぼねたび、皇后宮は、弘徽殿におはします。女房それも、登華殿のつゞきに、つぼねして侍ふ。中宮は、承香殿におはします。その女房、麗景殿につぼねあり。內のおとゞの奉りたまへる女御は、梅壺に坐す。その女房、襲芳舍につぼね賜はりき。かんなりのつぼなるべし。東宮は桐壺におはします。女房はその北舍につぼねしつゝ侍ふ。東宮のみやす所は、梨壺なれば女房その北につぼね賜はり。關白殿は宣耀殿を御とのゐどころとせさせ給へり。近き世には、里內裏にてのみ有りしかば、かやうの御すまひもなきに、いとなまめかしう、珍らかなるべし。弓矢などいふ物あらはに持ちたるものやはありし。ものに入れかくしてぞ大路をもありきける。都の大路をも、鏡の如くみがきたてゝ、つゆきたなげなる所もなかりけり、世の末ともなく、かく治まれる世の中、いとめでたかるべし。

     ない宴