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ふべきとおぼしめぐらす。このたびたり給はむ年若菜などてうじてやとおぼしてさまざまの御法服のこと、いもひの御まうけのしつらひ何くれとさまことに變れる事どもなれば、人の御心しらひども入りつゝおぼしめぐらす。いにしへも遊びの方に御心留めさせ給へりしかばまひびと樂人などを、心ことに定めすぐれたるかぎりを整へさせ給ふ。右大殿の御子どもふたり、大將の御子ないしのすけばらの加へて三人、又ちひさき七つよりかみのは皆殿上せさせ給ふ。兵部卿の宮のわらはそんわうすべてさるべき宮達の御子ども、家のこの君達皆えらび出で給ふ。殿上の君達もかたちよく同じき舞の姿も心ことなるべきを定めて數多の舞のまうけをせさせ給ふ。いみじかるべきたびのことゝてみなひと心を盡し給ひてなむ。道々の物の師上手いとまなきころなり。宮はもとよりきんのおんことをなむ習ひ給ひけるをいと若くて院にもひき別れ奉り給ひにしかば覺束なく思して「參り給はむついでにかの御琴の音なむ聞かまほしき。さりともきんばかりはひき取り給ひつらむ」としりうごとに聞え給ひけるを內にも聞し召して「げにさりともけはひことならむかし。院の御前にて手つくし給はむついでに參りて聞かばや」などの給はせけるをおとゞの君も傅へ聞き給ひて「年比さりぬべきついでごとには敎へ聞ゆることもあるを、そのけはひはげに優り給ひにたれど、まだ聞し召し所あるものふかきてにはおよばぬを何心もなくて參り給へらむついでに聞し召さむとゆるしなくゆかしがらせ給はむはいとはしたなかるべきことにも」といとほしくおぼしてこのころぞ御心留めて敎へ聞え給ふ。しらべ殊なるて二つ三つおもしろきだいこくど