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のおぼし騷ぐらむにも劣らず、いかにおはせむと歎きて心苦しくうしろめたくおぼさるれど、限ある御とぶらひばかりこそあれ、あまりもえまうで給はで忍びてぞ御いのりなどもせさせ給ひける。さるは女二の宮の御もぎたゞこのごろになりて世の中ひゞきいとなみのゝしる。よろづのこと帝の御心ひとつなるやうにおぼし急げば、御後見なきしもぞなかなかめでたげに見えける。女御のしおき給へることをばさるものにて、つくもどころさるべきずりやうどもなどとりどりに仕うまつる事どもいと限なし。やがてその程に參りそめ給ふべきやうにありければ、男がたも心づかひし給ふころなれど、例のことなればそなたざまには心もいらで、この御ことのみいとほしうおぼし歎かる。二月のついたちごろに、なほしものとかいふことに權大納言になりて右大將かけ給ひつ。右のおほい殿左にておはしけるが辭し給へる所なりけり。よろこびに所どころありき給ひて、この宮にも參り給へり。いと苦しうし給へば、こなかにおはします程なりければやがて參り給へり。僧などさぶらびて、いとびんなきかたにと驚き給ひて、あざやかなる御なほし、御したがさねなど奉り、ひきつくろひて、おりてたふの拜したまふ御有樣どもとりどりにいとめでたし。やがて今宵つかさの人に祿たまふ。あるじの所にとさうじ奉り給ふを、惱み給ふ人によりてぞおぼしたゆたひ給ふめる。左のおほい殿のし給ひけるまゝにとて六條院にてなむありける。ゑんがのみこたち、上達部、大饗に劣らず、あまりさわがしきまでなむつどひ給ひける。この宮もわたり給ひて、しづ心なければまだことはてぬに急ぎ歸り給へるを、おほい殿の御方には「いと飽かずめざま