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たり。守のしわざなりけり。人々もあざやかならぬ色の山吹、搔練、濃ききぬ、靑鈍などを着かへさせ薄色のも、靑朽葉などをとかくまぎらはして御だいはまゐる。女所にてしどけなく萬の事ならひたる宮のうちにありさま心とゞめて僅なる下人をもいひとゝのへこの人一人のみあつかひおこなふ。かくおぼえぬやんごとなきまらうどの坐すると聞きて、もと勤めざりけるけい司などうちつけに參りてまどころなどいふ方に侍ひて營みけり。かくせめて住みなれがほつくり給ふ程、三條殿かぎりなめりと、さしもやはとこそ、かつは賴みつれ、まめびとの心かはるは名殘なくなむと聞きしは誠なりけりと世をこゝろみはつる心地して、いかさまにしてこのなめげさを見じとおぼしければ、大殿へ方たがへむとて渡り給ひにけるを、女御の御里におはする程などにたいめし給ひて、少し物思ひはるけ所に覺されて例のやうにも急ぎ渡り給はず。大將殿も聞き給ひて、さればよいと急に物し給ふ本性なり、このおとゞもはたおとなおとなしうのどめたる所さすがになく、いとひきゝりに花やい給へる人々にてめざまし見じ聞かじなどひがひがしき事どもしいで給ひつべきと驚かれ給ひて三條殿に渡り給へれば、君達もかたへはとまり給へれば、姬君たちさてはいとをさなきとをぞゐておはしにける。見つけて悅びむつれあるはうへを戀ひ奉りて憂へ泣き給ふを心苦しとおぼす。せうそこたびたび聞えて迎に奉れ給へど御かへりだになし。かくかたくなしうかるがるしの世やとものしう覺え給へど、おとゞの見聞き給はむ所もあればくらしてみづから參り給へり。寢殿になむ坐するとて例の渡り給ふ方は御達のみ侍らふ。若君達ぞ乳母にそ