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くだりをこゝにはせさせ給ふ。つくもどころの人召して忍びてあまの御具どものさるべきはじめのたまはす。御しとね、うはむしろ、屛風、几帳などのこともいと忍びてわざとがましく急がせ給ひける。かくて山のみかどの御賀も延びて秋とありしを、八月は大將の御き月にてがくそのこと行ひ給はむにびんなかるべし。九月は院の大后の隱れ給ひにし月なれば十月にとおぼしまうくるを、姬宮いたく惱み給へばまたのびぬ。衞門督の御あづかりの宮なむその月には參り給ひける。おほきおとゞ居立ちていかめしくこまかに物のきよら、ぎしきをつくし給へりけむ。かんの君もその序にぞ思ひ起して出で給ひける。猶なやましく例ならず病づきてのみすぐし給ふ。宮もうちはへて物をつゝましくいとほしとのみおぼし歎くけにやあらむ、月多く重なり給ふまゝにいと苦しげにおはしませば、院は心うしと思ひ聞え給ふ方こそあれ、いとらうたげにあえかなるさましてかく惱みわたり給ふを、いかにおはせむとなげかしくてさまざまにおぼしなげく。御いのりなど今年はまぎれ多くてすぐし給ふ。御山にもきこし召して、らうたく戀しと思ひ聞え給ふ。月比かくほかほかにて渡り給ふこともをさをさなきやうに人の奏しければいかなるにかと御胸つぶれて、世の中も今更にうらめしくおぼして對の方の煩ひける比は猶そのあつかひにと聞し召してだになまやすからざりしを、その後なほり難く物し給ふらむはその比ほひびんなきことや出て來たりけむ、みづから知り給ふことならねど善からぬ御うしろみどもの心にていかなることかありけむ、うちわたりなどのみやびをかはすべきなからひなどにも、けしからずうきこといひ出づるたぐひ