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おぼしきざすさまのいと殊なれば、なかなかにてやまじらはむと、左のおとゞ左大將などもおぼしとゞまるなるを聞しめして「いとたいだいしきことなり。宮仕のすぢはあまたある中に少しのけぢめをいどまむこそほいならめ。そこらのきやうさくの姬君達のひきこめられなば世に、はえあらじ」とのたまひて御參りのびぬ。つぎつぎにもとしづめ給ひけるを、かゝるよし所々に聞き給ひて左大臣殿の三の君參り給ひぬ。麗景殿と聞ゆ。この御かたは昔の御とのゐ所しげいさを改めしつらひて御參りのびぬるを、宮にも心もとながらせ給へば、四月にと定めさせ給ふ。御調度どもゝもとあるよりも整へて、御みづからも物のしたかたゑやうなどをも御覽じ入れつゝすぐれたる道々の上手ども召し集めてこまかに磨き整へさせ給ふ。さうしの箱どもに入るべきさうしどものやがて本にもし給ふべきをえらせ給ふ。いにしへのかみなききはの御手どもの世に名を殘し給へるたぐひのもいと多くさぶらふ。「萬の事昔には劣りざまに淺くなり行く世のすゑなれど、かんなのみなむ今の世はいときはなくなりたる。ふるき跡は定まれるやうにあれどひろき心ゆたかならず、一すぢに通ひてなむありける。たへにをかしきことはとよりてこそ書き出づる人々ありけれど、女でを心に入れて習ひしさかりにこともなき手本おほく集へたりし中に、中宮の母御息所の心に入れず走り書い給へりし一くだりばかりわざとならぬをえてきはことに覺えしはや。さてあるまじき御名もたて聞えてしぞかし。悔しき事に思ひしみ給へりしかどさしもあらざりけり。宮にかく後見仕うまつることを、心深うおはせしかばなき御影にも見なほし給ふらむ。宮の御手はこま