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Page:Kokubun taikan 01.pdf/500

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うらめしく、

  ひたちなるするがの海のすまの浦になみ立ちいでよ箱崎の松」と書きて讀み聞ゆれば、「あなうたて、誠に自らのにもこそいひなせ」とかたはらいたげにおぼいたれど、「それは聞かむ人辨へ侍りなむ」とて、押し包みて出しつ。御方みて、「をかしの御口つきや。まつとの給へるを」とて、いとあまえたるたきものゝ香をかへすがへすたきしめ居給へり。べにといふものいと赤らかにかいつけて髮けづりつくろひ給へる、さる方ににぎはゝしう愛敬づきたり。御對面のほどさしすぐいたることゞもあらむかし。


篝火

このごろ世の人のことぐさに、「內のおほいとのゝ今姬君」と事に觸れつゝいひちらすを、源氏のおとゞ聞し召して、「ともあれかくもあれ、人見るまじくて籠り居たらむをんなごを、なほざりのかごとにてもさばかりに物めかし出でゝ、かく人に見せ言ひ傳へらるゝこそ心えぬことなれ。いときはきはしう物し給ふあまりに、深き心をも尋ねずもて出でゝ心にもかなはねばかくはしたなきなるべし。萬の事もてなしからにこそなだらかなるものなめれ」といとほしがり給ふ。かゝるにつけてもげによくこそと、親と聞えながらも年頃の御心を知り聞えず馴れ奉らましかばはぢがましきことやあらましと、對の姬君おぼし知るを、右近もいとよ