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出でつべき根に結びつけ給へれば、今日の御返りなどそゝのかし置きて出で給ひぬ。これかれも「なほ」と聞ゆれば御心にもいかゞおぼしけむ。
「あらはれていとゞ淺くも見ゆるかなあやめもわかず流れけるねの。わかわかしく」とばかりほのかにぞあめる。手を今少しゆゑづけたらばと、宮は好ましき御心に聊飽かぬことゝ見給ひけむかし。くす玉などえならぬさまにて所々より多かり。おぼし沈みつる年ごろの名殘なき御有樣にて心ゆるび給ふことも多かるに、同じくは人の傷つくばかりのことなくても止みにしがなといかゞおぼさゞらむ。殿は東の御かたにもさし覗き給ひて、「中將の今日のつかさの手つがひのついでにをのこども引きつれて物すべきさまにいひしを、さる心し給へ。まだあかき程にきなむものぞ。あやしくこゝにはわざとならず忍ぶることをも、このみこたちの聞きつけてとぶらひものし給へば、おのづからことごとしくなむあるを、用意し給へ」など聞え給ふ。うま塲のおとゞはこなたの廊より見とほすほど遠からず。「若き人々、わたどのゝ戶あけて物見よや。左のつかさにいとよしある官人多かる頃なり。せうせうの殿上人に劣るまじ」とのたまへば、物見むことをいとをかしと思へり。たいの御方よりもわらはべなど物見に渡り來て、廊の戶口にみす靑やかに懸け渡して今めきたるすそごの御几帳ども立てわたし、わらはしもづかへなどさまよふ。さうぶがさねのあこめふたあゐのうすものゝ汗衫着たるわらはべぞ西の對のなめる。このましくなれたるかぎり四人、しもづかへはあふちのすそごの裳、なでしこの若葉の色したるからぎぬ今日のよそひどもなり。こなたのは