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濃き單がさねになでしこがさねの汗衫などおほどかにておのおのいどみ顏なるもてなし見所あり。若やかなる殿上人などはめをたてつゝけしきばむ。ひつじの時ばかりに、馬塲のおとゞに出で給ひて、げにみこたちおはしつどひたり。てつがひのおほやけごとにはさま變りてすけたちかきつれ參りて、さまことに今めかしく遊び暮し給ふ。女は何のあやめも知らぬことなれど、舍人どもさへえんなるさうぞくをつくして、身をなげたる手惑はしなどを見るぞをかしかりける。南の町もとほしてはるばるとあれば、あなたにもかやうの若き人どもは見けり。たぎうらく、らくそんなど遊びてかちまけのらんざうどものゝしるも、夜に入りはてゝ何事も見えずなりはてぬ。舍人どもの祿品々たまはる。いたく更けて人々皆あがれ給ひぬ。おとゞはこなたに御殿籠りぬ。物語など聞え給ひて、「兵部卿の宮の、人よりはこよなく物し給ふかな。かたちなどはすぐれねど用意けしきなどいとよしあり、あいぎやうづきたる君なり。忍びて見給ひつや。よしといへどなほこそあれ」とのたまふ。「御弟にこそものし給へどねびまさりてぞ見え給ひける。年ごろかくをり過ぐさず渡りむつび聞え給ふと聞き侍れど、昔のうちわたりにてほのみ奉りし後おぼつかなしかし。いとよくこそかたちなどねびまさり給ひにけれ。そちのみこよく物し給ふめれどけはひ劣りて大君の氣色にぞものし給ひける」とのたまへば、ふと見知り給ひにけりとおぼせどほゝゑみて、なほあるをば善しとも惡しともかけ給はず、人の上をなむつけおとしめざまのこといふ人をばいとほしきものにし給へば、右大將などをだに心にくき人にすめるを何ばかりかはある。近きよすがにて