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にもあらざらむものから、ましていとあはつけう待ちきゝおぼさむことゝ萬にやすげなうおぼしみだる。宮、大將などは殿の御氣色もてはなれぬさまに傳へ聞き給ひていとねんごろに聞え給ふ。このいはもる中將もおとゞの御ゆるしを見てこそ、かたよりにほの聞きて誠のすぢをばしらず、唯ひとへに嬉しくておりたち恨み聞え惑ひありくめり。
螢
今はかく公もおもおもしきほどによろづのどやかにおぼし靜めたる御有樣なれば、賴み聞えさせ給へる人さまざまにつけて皆思ふまゝに定まりたゞよはしからであらまほしくて過ぐし給ふ。對の姬君こそいとほしく思の外なるおもひそひていかにせむとおぼし亂るめれ。かのげんが憂かりしさまにはなずらふべきけはひならねど、かゝるすぢにかけても人の思ひより聞ゆべき事ならねば心一つにおぼしつゝさまことに疎ましと思ひきこえ給ふ。何事をもおぼし知りたる御齡なればとざまかうざまにおぼし集めつゝ、母君のおはせずなりにける口惜しさも又とりかへし惜しく悲しくおぼゆ。おとゞもうち出でそめ給ひてはなかなか苦しくおぼせど人めを憚り給ひつゝはかなき事をもえ聞え給はず。苦しくもおぼさるゝまゝに繁く渡り給ひつゝおまへの人遠くのどやかなる折はたゞならずけしきばみ聞え給ふごとに、胸潰れつゝけざやかにはしたなく聞ゆべきにはあらねば、唯見知らぬさまにもて