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なし聞え給ふ。人ざまのわらゝかにけ近く物し給へばいたくまめだちたる心ちし給へど、猶をかしくあいぎやうづきたるけはひのみ見え給へば兵部卿の宮などはまめやかにせめ聞え給ふ。御らうの程はいくばくならぬに、五月雨になりぬるうれへをし給ひて、「少しけ近きほどをだに許し給はゞ思ふことをも片はしはるけてしがな」と聞え給へるを殿御覽じて、「なにかはこのきんだちのすき給はむは見どころありなむかし。もてはなれてな聞え給ひそ」と敎へて、「御かえり時々聞え給へ」とて御かへり敎へて書かせ奉り給へど、いとうたておぼえ給へば、「みだり心ちあし」とて聞え給はず。人々も殊にやんごとなくよせおもきなどもをさをさなし。唯母君の御伯父なりける宰相ばかりの人のむすめにて心ばせなど口惜しからぬが世に衰へ殘りたるを尋ねとり給へるぞ宰相の君とて、手などもよろしく書き、大方もおとなびたる人なればさるべき折々の御返りなど書かせ給へば、召し出でゝことばなどのたまひて書かせ給ふ。物などのたまふさまをゆかしとおぼすなるべし。さうじみはかくうたてある物なげかしさの後はこの宮などは哀げに聞え給ふ時は少し見いれ給ふ時もありけり。何かと思ふにはあらず。かく心憂き御氣色見ぬわざもがなとさすがにざれたる所つきておぼしけり。殿はあいなくおのれ心げさうして宮を待ち聞え給ふも知り給はで、よろしき御返りなるを珍しがりていと忍びやかにておはしましたり。妻戶のまに御褥參らせてみ几帳ばかりを隔にて近きほどなり。いといたう心してそらだきもの心にくき程ににほはしてつくろひおはするさま、親にはあらでむつかしき御さかしら人のさすがにあはれに見え給ふ。宰相の