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Page:Kokubun taikan 01.pdf/399

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ど「賴もしき御かげに幼きものを奉りおきて自らはなかなか幼くより見給へもつかず、まづめに近きまじらひなどはかばかしからぬを見給へ歎きいとなみつゝさりとも人となさせ給ひてむと賴みわたり侍りつるに思はずなることの侍りければいと口惜しうなむ。誠に天の下ならぶ人なき有職には物せらるめれどしたしきほどにかゝるは人の聞き思ふ所もあはつけきやうになむ。何ばかりの程にもあらぬなからひにだにし侍るをかの人の御ためにもいとかたはなることなり。さしはなれきらきらしう珍しげあるあたりに今めかしうもてなさるゝこそをかしけれ。ゆかりむつび拗けがましきさまにておとゞも聞きおぼす所侍りなむ。さるにてもかゝる事なむと知らせ給ひて殊更にもてなし少しゆかしげある事をまぜてこそ侍らめ。幼き人々の心に任せて御覽じ放ちけるを心うく思う給ふる」と聞え給ふも夢にも知り給はぬことなれば淺ましうおぼして「げにかうのたまふもことわりなれどかけてもこの人々の下の心なむ知り侍らざりける。げにいと口惜しきことは、こゝにこそまして歎くべく侍れ。諸共に罪をおほせ給ふは恨めしきことになむ。見奉りしより心殊に思ひ侍りてそこにおぼし至らむことをもすぐれたるさまにもてなさむとこそ人知れず思ひ侍れ。物げなき程を心の闇に惑ひて急ぎ物せむとは思ひよらぬことになむ。さても誰かはかゝる事は聞えけむ。善からぬ人の事につきてきはだけくおぼしのたまふもあぢきなく空しきことにて人の御名や穢れむ」とのたまへば「何のうきたることにか侍らむ。さぶらふめる人々もかつは皆もどき笑ふべかめるものをいと口惜しく安からず思ひ給へらるゝや」とて立ち給ひぬ。心