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え給ふやうあらむとは思う給へながら、かう籠りおはすることなむ心苦しう侍る」と聞え給ひて「時々はことわざし給へ。笛の音にもふることは傳はるものなり」とて御笛奉り給ふ。いと若うをかしげなる音に吹きたてゝいみじうおもしろければ御琴どもをばしばしとゞめておとゞははうしおどろおどろしからずうち鳴らし給ひて萩が花ずりなどうたひたまふ。「大殿もかやうの御遊に心とゞめ給ひていそがしき御政どもをば遁れ給ふなりけり。げにあぢきなき世に心の行くわざをしてこそすぐし侍りなまほしけれ」などのたまひて、御かはらけ參り給ふに暗うなればおほとなぶらまゐり、御湯漬くだものなど誰も誰も聞しめす。姬君はあなたに渡し奉り給ひつ。强ひてけどほくもてなし給ひ御琴の音ばかりをも聞かせ奉らじと今はこよなくへだて聞え給ふを「いとほしき事ありぬべき世なるにこそ」と近う仕うまつる大宮の御方のねび人どもさゝめきけり。おとゞ出で給ひぬるやうにて忍びて人に物のたまふとて立ち給へりけるを、やをらかいほそりて出で給ふ道にかゝるさゝめきごとをするに怪しうなり給ひて御耳とゞめ給へばわが御上をぞいふ。「かしこがり給へど人の親よ、おのづからをれたることこそ出でくべかめれ。子を知るはといふは空言なめり」などぞつきじろふ。あさましくもあるかな。さればよ、思ひよらぬことにはあらねどいはけなきほどにうちたゆみて、世はうきものにもありけるかなと氣色をつぶつぶと心え給へど、音もせで出で給ひぬ。御さきおふ聲のいかめしきにぞ「殿は今こそ出でさせ給ひけれ。いづれの隈におはしましつらむ。今さへかゝるあだけこそ」といひあへり。さゝめきごとの人々は「いとかうば