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Page:Kokubun taikan 01.pdf/226

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を村雨のまぎれにてえしり給はぬに輕らかにふとはひ入り給ひてみす引き上げ給ふまゝに「いかにぞいとうたてありつる夜のさまに、思ひやり聞えながら參り來でなむ、中將宮の亮など侍ひつや」などのたまふけはひのしたどにあはつけきを、大將は物のまぎれにも左のおとゞの御有樣ふとおぼしくらべられてたとしへなうぞほゝゑまれ給ふ。げに入りはてゝものたまへかしな。かんの君いと侘しうおぼされてやをらゐざり出で給ふに、おもての赤みたるを猶惱ましうおぼさるゝにやと見給ひて「など御氣色の例ならぬものゝけなどのむつかしきをずほう延べさすべかりけり」とのたまふに、薄二藍なる帶の御ぞにまつはれて引き出でられたるを見つけ給ひて怪しとおぼすに、又たゝう紙の手習などしたる御几帳のもとに落ちたりけり。これは如何なるものどもぞと御心驚かれて、「かれはたれかぞ。氣色殊なるものゝさまかな。賜へ。それとりてたがぞと見侍らむ」とのたまふにぞ、うち見かへりてわれも見つけ給へる、紛はすべき方もなければいかゞはいらへ聞え給はむ。われにもあらでおはするを、子ながらも恥しとおぼすらむかしとさばかりの人はおぼし憚るべきぞかし。されどいと急にのどめたる所おはせぬおとゞのおぼしもまはさずなりて疊紙をとり給ふまゝに几帳より見入れ給へるに、いといたうなよびてつゝましからず添ひ臥したる男もあり。今ぞやをら顏引き隱してとかくまぎらはす。あさましう目ざましう心やましけれど、ひたおもてにはいかでか顯し給はむ。目もくるゝ心地すればその疊紙をとりて寢殿へ渡り給ひぬ。かんの君はわれかの心地して死ぬべくおぼさる。大將殿もいとほしう遂にようなきふるまひの