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Page:Kokubun taikan 01.pdf/223

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なく重き御後見とおぼして長き世のかためと聞え置き給ひし御ゆゐごんをおぼし召すに、捨て難きものに思ひ聞え給へるにかひなき事と度々用ゐさせ給はねど、せめてかへさひ申し給ひて籠り居給ひぬ。今はいとゞひとぞうのみ返すがへす榮え給ふ事限なし。世のおもしと物し給へるおとゞのかく世を遁れ給へば、おほやけも心ぼそうおぼされ世の人も心あるかぎりは歎きけり。御子どもはいづれともなく人がらめやすく世に用ゐられて心地よげに物し給ひしを、こよなうしづまりて三位中將なども世を思ひしづめるさまこよなし。かの四の君をも猶かれがれに打ち通ひつゝめざましうもてなされたれば心解けたる御聟の中にも入れ給はず、思ひ知れとにやこの度の司召にも漏れぬれどいとしも思ひ入れず。大將殿かうしづかにておはするに世ははかなきものと見えぬるをましてことわりとおぼしなして常に參り通ひ給ひつゝ學問をし遊をも諸共にし給ふ。いにしへも物ぐるほしきまで挑み聞え給ひしをおぼし出でゝ、かたみに今もはかなき事につけつゝさすがに挑み給へり。春秋のみど經をばさるものにて臨時にもさまざま尊き事どもをせさせ給ひなどして、又徒に暇ありて宮仕をもをさをさし給はず、御心に任せてうち遊びておはするを、世の中には煩はしき事どもやうやう言ひ出づる人々あるべし。夏の雨のどかに降りてつれづれなるころ、中將さるべき集ども數多もたせて參り給へり。殿にも、ふ殿あけさせ給ひて、まだひらかぬみ厨子どもの珍しき古集のゆゑなからぬ少しえり出でさせ給ひて、その道の人々わざとはあらねどあ