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かなく恨めしく覺したれど、萬の御よそひ何くれと珍らしきさまに調じ出で給ひつゝ御むすこの君だち唯この御とのゐ所の宮仕を勤め給ふ。宮腹の中將は中に親しく馴れ聞え給ひて遊たはぶれをも人よりは心やすくなれなれしくふるまひたり。右の大臣のいたはりかしづき給ふすみかはこの君もいとものうくしてすきがましきあだ人なり。里にても我がかたのしつらひまばゆくして君のいでいりし給ふにうちつれ聞え給ひつゝよるひる學問をも遊をも諸共にしてをさをさ立ち後れず、いづくにてもまつはれ聞え給ふほどに、おのづからかしこまりをもおかず、心の中に思ふことをも隱しあへずなむむつれ聞え給ひける。
つれつれと降りくらしてしめやかなる宵の雨に殿上にもをさをさ人ずくなに御とのゐ所も例よりはのどやかなる心地するに、おほとなぶら近くてふみどもなど見給ふついでに近き御厨子なるいろいろの紙なるふみどもをひき出でゝ、中將わりなくゆかしがれば、「さりぬべき少しは見せむ。かたはなるべきもこそ」とゆるし給はねば、「そのうちとけて傍痛しと覺されむこそゆかしけれ。押しなべたる大かたのは數ならねどほどほどにつけてかきかはしつゝも見侍りなむ。おのがじゝうらめしき折々待顏ならむ夕暮などのこそ見所はあらめ」と怨ずれば、やんごとなく切に隱し給ふべきなどは、かやうにおほぞうなる御厨子などにうち置きちらし給ふべくもあらず深くとり隱し給ふべかめればこれは二のまちの心やすきなるべし。かたはしづゝ見るに、「かくさまざまなるものどもこそ侍りけれ」とて、心あてに「それかかれか」など問ふ中に言ひ當つるもあり、もてはなれたる事をも思ひよせて疑ふもをかしと覺