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奏し給ふ。「したり顏なりや」と笑はせ給ひて「わざとあめるを、早うものせよかし。をんなみこたちなども生ひ出づる所なればなべてのさまには思ふまじきを」などの給はす。御よそひなど引きつくろひ給ひて痛う暮るゝ程にまたれてぞ渡り給ふ。櫻の唐のきの御直衣、葡萄染のしたがさね尻いと長く引きて、皆人はうへのきぬなるに、あざれたるおほぎみ姿のなまめきたるにていつかれ入り給へる御ざまげにいとことなり。花の匂もけおされてなかなかことざましになむ。遊などいとおもしろうし給ひて夜少し更け行くほどに源氏の君いたう醉ひなやめるさまにもてなし給ひまぎれ立ち給ひぬ。寢殿に女一の宮、女三の宮のおはしますひんがしの戶口におはして寄り居給へり。藤はこなたのつまに當りてあれば、御格子ども上げわたして人々出で居たり。袖口など蹈歌の折おぼえてことさらめきもて出でたるを、ふさはしからずまづ藤壺わたりをおぼし出でらる。「惱ましきにいと痛う强ひられてわびにて侍り。かしこけれどこの御まへにこそは蔭にも隱させ給はめ」とて妻戶の御簾を引き着給へば「あな煩はし。よからぬ人こそやんごとなきゆかりはかこち待るなれ」といふ氣色を見給ふに、おもおもしうはあらねどおしなべてのわかうどゞもにはあらず。あてにをかしきけはひしるし。そらだきものいとけぶたうくゆりてきぬのおとなひいと華やかにうちふるまひなして、心にくゝ奧まりたるけはひは立ち後れいまめかしき事を好みたるわたりにて、やんごとなき御かたがた物見給ふとてこの戶口はしめ給へるなるべし。さしもあるまじき事なれど、さすがにをかしうおぼされていづれならむと胸うち潰れて「扇を取られてからきめ