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うにふみどもきやうざくに、まひがくものゝねどもとゝのほりて齡延ぶることなむ侍らざりつる。道々の物の上手ども多かる頃ほひ委しうしろしめしとゝのへさせ給へるけなり。翁もほとほと舞ひ出でぬべき心地なむし侍りし」と聞え給へば、「殊にとゝのへ行ふ事も侍らず。唯公事にそしうなる物の師どもをこゝかしこ尋ね侍りしなり。萬の事よりは柳花苑誠にこうたいの例ともなりぬべく見給へしに、ましてさかゆく春に立ち出でさせ給へらましかば、世のめいぼくにや侍らまし」と聞え給ふ。辨、中將など參りあひて高欄に背中おしつゝとりどりに物の音ども調べ合せて遊び給ふ、いとおもしろし。かの有明の君ははかなかりし夢を思し出でゝいと物なげかしうながめ給ふ。春宮には卯月ばかりとおぼし定めたればいとわりなう思し亂れたるを、をとこ君も尋ね給はむに跡はかなくはあらねど孰れとも知らで殊にゆるし給はぬあたりにかゝづらはむも人わろく思ひわづらひ給ふに、三月の二十餘日みぎのおとゞの弓のけちに上達部みこたち多くつどへ給ひてやがて藤の花の宴し給ふ。花盛は過ぎにたるを、外の散りなむとや敎へられたりけむ、後れて咲く櫻二木ぞいとおもしろき。新しう造り給へる殿を宮達の御裳着の日磨きしつらはれたり。華々とものし給ふ殿のやうにて何事も今めかしうもてなし給へり。源氏の君にも一日うちにて御たいめんのついでに聞え給ひしかどおはせねば口惜しう物のはえなしとおぼして御子の四位少將を奉りたまふ。
「わが宿の花しなべての色ならば何かはさらに君をまたまし」內におはする程にて上に