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かなき一くだりの御返りのたまさかなりしも絕えはてにたり。七月になりてぞ參り給ひける。珍しう〈くイ〉あはれにていとゞしき御思ひの程かぎりなし。少しふくらかになり給ひてうち惱みおもやせ給へる、はたげに似るものなくめでたし。例のあけ暮こなたにのみおはしまして、お遊もやうやうをかしきころなれば、源氏の君もいとまなくめしまつはしつゝ御琴笛などさまざまに仕うまつらせ給ふ。いみじうつゝみ給へど忍び難きけしきの漏り出づる折々、宮もさすがなる事どもを多く覺しつゞけゝり。
かの山寺の人はよろしうなりて出で給ひにけり。京の御すみか尋ねて時々の御せうそこなどあり。同じさまにのみあるもことわりなるうちに、この月比はありしにまさる物思ひに異ことなくて過ぎ行く。秋の末つかたいともの心ぼそくて歎き給ふ。月をかしき夜忍びたる所に辛うじて思ひ立ち給へるを、時雨めいてうちそゝぐ。おはする所は六條京極わたりにて、內よりなれば少し程遠き心ちするに、荒れたる家の木立いとものふりてこぐらう見えたるあり。例の御供に離れぬ惟光なむ「故按察大納言の家に侍り。一日物のたよりにとぶらひて侍りしかば、かの尼上いたうよわり給ひにたれば何事も覺えずとなむ申して侍りし」と聞ゆれば、「あはれのことや。とぶらふべかりけるをなどかさなむとも物せざりし。入りて消そこせよ」との給へば、人入れてあないせさす。「わざとかく立ち寄り給へる事」と言はせたれば、入りて「かく御とぶらひになむおはしましたる」といふに、驚きて、「いとかたはらいたきことかな。この日ごろむげにいとたのもしげなくならせ給ひにたれば御對めんなどもあるまじ」といへども「返し奉らむはかしこし」とて南の