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Page:Kokubun taikan 01.pdf/106

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にかと御心動かせ給ふべかめるも恐ろしうのみおもほえ給ふ。宮も、猶いと心うき身なりけりとおぼし歎くに惱しさもまさり給ひて、とく參り給ふべき御使しきれどおもほしも立たず。誠に御心ち例のやうにもおはしまさぬはいかなるにかと人知れずおぼす事もありければ、心うく、いかならむとのみおぼし亂る。あつき程はいとゞ起きもあがり給はず、みつきになり給へばいとしるきほどにて人々見奉り咎むるに、あさましき御すくせの程心うし。人は思ひよらぬことなれば、この月まで奏せさせ給はざりける事と驚ききこゆ。我が御心一つにはしるうおぼし分くこともありけり。御湯殿などにも親しう仕うまつりて何事の御けしきをもしるく見奉り知れる御めのとごの辨命婦などぞ怪しと思へどかたみに言ひ合すべきにあらねば、猶遁れ難かりける御宿世をぞ命婦はあさましと思ふ。內には御ものゝけのまぎれにてとみにけしきなうおはしましけるやうにぞ奏しけむかし。皆人もさのみ思ひけり。いとゞ哀にかぎりなう覺されて御使などのひまなきもそら恐しう物をおもほす事ひまなし。中將の君もおどろおどろしうさま異なる夢を見給ひて、合するものを召して問はせ給へば、及びなう覺しもかけぬすぢの事を合せけり。「そのなかにたがひめありて愼ませ給ふべき事なむ侍る」といふに、煩しく覺えて「みづからの夢にはあらず人の御事を語るなり、この夢合ふまでまた人にまねぶな」との給ひて、心の中には、いかなることならむとおぼしわたるに、この宮の御事聞き給ひて、もしさるやうもやと覺し合せ給ふに、いとゞしくいみじき言の葉を盡し聞え給へど、命婦も思ふにいとむくつけう煩しさ增りて更にたばかるべきかたなし。は