る名を命ておくんなさい 隱「夫では鶴は千年と云ふから鶴吉とでも命たら何うだイ 熊「モー些と長く生る名を命ておくんなさい 隱「夫では龜吉は何うだイ、龜は萬年と云ふから芽出度名だが 熊「幾何龜が芽出度たつて萬年經ば死ぬんで御座いませう 隱「左樣サ、萬年經ば死ぬだらうな 熊「其奴は面白くねエ、俺の子供は何年經ても死なないと云ふ名を命ておくんなさい 隱「そんな無理な事を云つては困る、夫では是は話だが何うだらう壽限無と命たら 熊「何でがすエ、其壽限無とは 隱「壽と云ふ文字は壽、限は限る、無は無し、詰り壽命限りなしと云ふ事だな 熊「其奴は有難エモツと芽出度エ名はありませんかイ 隱「五光のすりきれず 隱「何でげすエ夫は 隱「五光は 隱「天とう樣の光りだ、俗に五光がさすと云ふ、アノ五光ばかりは何な物に當つても決してすりきれない、從つて丈夫で長命なもので 熊「成程、其外に何か芽出度エのはありませんか 隱「貝砂利水魚のスイギヤウバツ 熊「夫は何う云ふ譯で 隱「貝砂利と云ふから貝に砂利だ、是は何の位ゐ海にあるか數が知れぬ、スイギヤウバツ