ふが、イヤにお前さんは物覺えが宜いネ、貸たものならドン〳〵忘れなくつては困る 熊「冗談云つちやア叶ねエ 熊「處で今日は芽出度事で來たんで 隱「婚禮かナ 熊「イエ若樣が生れたんで 隱「アー然うか、お邸に御分娩があつたのか 熊「エー 隱「イヤサ、お邸で御男子御出生あらせられたのか 熊「何だか知らねエが男の子が生れたんで 隱「夫で今日喜びに行くのかイ 熊「何サ、俺の處で生れたんで 隱「自分の處で生れた者を若樣と云ふ奴があるものか 熊「今日が七夜なんで 隱「夫は芽出度な、銀も黃金も玉も何かせん、まされる寶子にしかめやも、子供は金にまさつた寶だ 熊「何でげすエ今お前さんの云つたのは 隱「アレは萬葉集にある子供を賞た歌で、洵に芽出度もの 熊「ヘエー然うで御座いますか、處で隱居さんお前さんに名を命て貰ふと思つて來ましたが、何とか長命を爲さうな芽出度エ名を命ておくんなさい 熊「よろしい、お賴みなら命てあげやう 熊「今日が七夜でお前さんが質屋の隱居だから、恰當宜らうと思つて來ました 隱「何んな名が宜いな 熊「何でも丈夫に育つて長命をす