Page:Kokkaron1905.djvu/45

提供:Wikisource
このページは校正済みです

體が定住して其地域を劃せしも周圍幾多の土地は茫々として不問の間に橫り、或は經界不明の箇所亦尠からざりしなり。耒耨の道開け地益の富を曉り、一方に於て人漸く多きに及び、土地の觀念は追々强く經界を嚴にするに至れり。今日の如き地球の表面は山路水脈島嶼岬崎之を掌上に指すが如し。人多くして地少なく、各國民は虎視耽々として寸攘尺奪せんとす。境土の觀念は國民的意識に於て最も强大なる者となれり。人或は日ふ、國家の要素は土地、人民、主權と。土地は今日に於てこそ要素たれ。定住前後に於ては今日の如き重要なる要素にはあらざりしなり。