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に權威の光りを發する能はざるなり。是れ王霸の觀念の異る所以なり。是の故に主權者は信賴、習慣及び正義の觀念の對象たるものなり。

以上吾人は主權者は歷史的に發生し來れるものにして社會の個人より認容せられ三種の觀念の對象たるに由りて能く維持せられ、他に何等の基礎なき所以を述べたり。

然れども主權者の能く維持せらるゝ所以は社會の組織に由ること甚だ大なり。之れを一身に譬ふるに局部に膨腫を生じたる時新鮮なる血液は循環し來りて絕えず之を刺戟し逐時に縮少ならしめ、遂に全く痕跡