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Page:Iki-no-Kozo.djvu/81

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「いき」の表現の自然形式は視󠄃覺に於て最も明瞭な且つ多樣な形で見られる(一一)

 視󠄃覺に關する自然形式としての表現とは、姿󠄄勢、身振その他を含めた廣義の表情󠄃と、その表情󠄃の支持者󠄃たる基體とを指して云ふのである。先づ、全󠄃身に關しては、姿󠄄勢を輕く崩すことが「いき」の表現である。鳥居淸長の繪には、男姿󠄄、女姿󠄄、立姿󠄄、居姿󠄄、後姿󠄄、前󠄃向、横向などあらゆる意味に於て、またあらゆるニユアンスに於て、この表情󠄃が驚くべき感受性をもつて捉へてある。「いき」の質料因たる二元性としての媚態は、姿󠄄體の一元的平󠄃衡を破ることによつて、異性へ向ふ能動性および異性を迎󠄃ふる受動性を表現する。しかし「いき」の形相因たる非現實的理