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Page:Iki-no-Kozo.djvu/80

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とかいふ場合がそれであるが、この種の「いき」は普通󠄃は一語の發音󠄃の仕方、語尾の抑揚などに特色をもつて來る。卽ち、一語を普通󠄃よりも稍長く引いて發音󠄃し、然る後、急󠄃に抑揚を附けて言ひ切ることは言葉󠄃遣としての「いき」の基礎をなしてゐる。この際、長く引いて發音󠄃した部分󠄃と、急󠄃に言ひ切つた部分󠄃とに、言葉󠄃のリズムの上の二元的對立が存在し、且つ、この二元的對立が「いき」のうちの媚態の二元性の客觀的表現と解される。音󠄃聲としては、甲走つた最高音󠄃よりも、稍さびの加はつた次󠄄高音󠄃の方が「いき」である。さうして、言葉󠄃のリズムの二元的對立が次󠄄高音󠄃によつて構󠄃成された場合に、「いき」の質料因と形相因とが完全に客觀化󠄃されるのである。しかし、身體的發表としての