Page:Iki-no-Kozo.djvu/65

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對他的關係の常態は甘味である。『甘えてすねて』とか『甘えるすがた色ふかし』などいふ言葉に表はれてゐる。さうして、澁味は甘味の否定である。荷風は「歡樂」の中で、『其の土地では一口に姐さんで通るかと思ふ年頃の澁いつくりの女』に出逢つてその女が十年前に自分と死なうと約束した小菊といふ藝者であつたことを述べてゐる。この場合、その女のもつてゐた昔の甘味は否定されて澁味になつてゐるのである。澁味は屢々派手の反對意味として取扱はれる。しかしながらそれは澁味の存在性を把握するに妨害をする。派手の反對意味としては地味がある。澁味をも地味をも齊しく派手に對立させることによつて、澁味と地味とを混同する結果を來たす。澁味と地味とは共に消極的