Page:Iki-no-Kozo.djvu/64

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しぶうるかといふ場合、うるかは味の澁さを賞するものであるから、澁味は有價値的意味を表現してゐる。甘味に就ても、例へば、茶のうちでは玉露に『甘い優美な趣味』があるとか、政よろしきを得れば天が甘露を降らすとか、または快く承諾することを甘諾と云つたりする時には、甘味は有價値的意味をもつてゐる。然るに、「あまつちょ」「甘つたるい物の言ひ方」「甘い文學」などいふ場合には、甘味によつて明かに反價値性が言表されてゐる。

 さて、澁味と甘味とが對他性上の消極的または積極的の存在樣態として理解される場合には、兩者は勝義において異性的特殊性の公共圈に屬するものとして考へられる。この公共圈內の