Page:Iki-no-Kozo.djvu/54

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點としては媚態の存在、差異點としては趣味の上下優劣を理解するのが普通である。「いき」が有價値的であるに對して下品は反價値的である。さうしてその場合、屢々、兩者に共通の媚態そのものが趣味の上下によつて異つた樣態を取るものとして思惟される。例へば『意氣にして賤しからず』とか、または『意氣で人柄がよくて、下卑た事と云つたら是計もない』などと云つてゐる場合、「いき」と下品との關係が言表はされてゐる。

 「いき」が一方に上品と、他方に下品と、かやうな關係に立つてゐることを考へれば、何故に屢々「いき」が上品と下品との中間者と見做されるかの理由がわかつて來る。一般に上品に或るものを加へて「いき」となり、更に加へて或る程度を越えると下