Page:Iki-no-Kozo.djvu/53

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の母親に關して『さも上品なるそのいでたち』といふ形容があるが、この母親は旣に後家になつてゐるのみならず『歲のころ、五十歲あまりの尼御前』である。さうして、藤兵衞の情婦お由の示す媚態とは絕好の對照をなしてゐる。然るにまた「いき」は、その徵表中に「意氣地」と「諦め」とを有することに基いて、趣味の卓越として理解される。從つて、「いき」と上品との關係は、一方に趣味の卓越といふ意味で有價値的であるといふ共通點を有し、他方に媚態の有無といふ差異點を有するものと考へられる。また、下品はそれ自身媚態と何等關係ないことは上品と同樣であるが、ただ媚態と一定の關係に置かれ易い性質をもつてゐる。それ故に「いき」と下品との關係を考へる場合には、共通