Page:Iki-no-Kozo.djvu/35

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てゐる。野暮と化物とは箱根より東に住まぬことを「生粹」の江戶兒は誇りとした。「江戶の花」には命をも惜しまない町火消、鳶者は寒中でも白足袋はだし、法被一枚の「男伊達」を尙んだ。「いき」には「江戶の意氣張り」「辰巳の俠骨」がなければならない。「いなせ」「いさみ」「傳法」などに共通な犯す可らざる氣品氣格がなければならない。『野暮は垣根の外がまへ、三千樓の色競べ、意氣地くらべや張競べ』といふやうに、「いき」は媚態でありながらなほ異性に對して一種の反抗を示す强味をもつた意識である。『鉢卷の江戶紫』に『粹なゆかり』を象徵する助六は『若い者、間近く寄つてしやつつらを拜み奉れ、やい』と云つて喧嘩を賣る助六であつた。『映らふ色やくれなゐの薄花櫻』と歌はれた三