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Page:Iki-no-Kozo.djvu/144

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い動きである。この味覺と嗅覺と觸覺とが原本的意味に於ける「體驗」を形成する。いはゆる高等感覺は遠󠄄官として發達󠄃し、物と自己とを分󠄃離して、物を客觀的に自己に對立させる。かくして聽覺は音󠄃の高低を判󠄄然と聽分󠄃ける。しかし部音󠄃は音󠄃色の形を取つて簡明な把握に背かうとする。視󠄃覺にあつても色彩󠄃の系統を立てて色調󠄃の上から色を分󠄃けて行く。しかし如何に色と色とを分󠄃割󠄅してもなほ色と色との間には把握し難󠄇い色合が殘る。さうして聽覺や視󠄃覺にあつて、明瞭な把握に漏れる音󠄃色や色合を體驗として拾得するのが、感覺上の趣味である。一般にいふ趣味も感覺上の趣味と同樣󠄂にものの「色合」に關してゐる。卽ち、道󠄃德的および美的評󠄃價に際して見られる人格的および民族的色