Page:Iki-no-Kozo.djvu/134

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と呼ぶことも出來る。然らば自由藝術󠄃たる音󠄃樂の「いき」は如何なる形に於て表はれてゐるか。先づ田邊󠄎尙雄氏の論文󠄃「日本音󠄃樂の理論附粹の硏究(一六)」によれば、音󠄃樂上の「いき」は旋律とリズムの二方面に表はれてゐる。旋律の規範としての音󠄃階は、わが國には都󠄃節󠄄音󠄃階と田舍節󠄄音󠄃階との二種あるが、前󠄃者󠄃は技巧的音󠄃樂の殆んど全󠄃部を支配する律旋法として主要󠄃のものである。さうして、假りに平󠄃調を以て宮音󠄃とすれば、都󠄃節󠄄音󠄃階は次󠄄のやうな構造󠄃をもつてゐる。

  平󠄃調―壹越(又󠄂は神󠄃仙)―盤涉―黃鐘―双調(又は勝󠄃絕)―平󠄃調

この音󠄃階にあつて宮音󠄃たる平󠄃調と、徵󠄃音󠄃たる盤涉とは主要󠄃なる契󠄅機󠄃として常に整然たる關係を保持してゐる。それに反して、